朝起きて玄関の扉を開けると、薄暗い庭が雪化粧。
玻璃真人の里…今朝の美里町は白く雪に染まっていました。この冬初めてのちょっと本格的な雪。近くの峠は、凍りついて長い車の列ができていたそうです。
~玻璃真人新記 真言の…<下>より
もうすぐクリスマスを迎えようという終業式の朝、繭良村は白銀の世界に覆われていた。この冬初めての雪だった。
「マコト~、マコト!」
騒々しい舞香の声と階段を駆け上がる音で、真言は目を覚ました。
「おはよう、マコト。時間だよ!」
襖を開けて舞香が声を掛けた。
「あ、ありがとう。おはよう。やけに朝から張り切ってるな、マイカ…」
真言が眠そうな目をこすりながら言うと、舞香は窓の前に立って真言を呼んだ。
「ほら、おいでよ。マコト」
床から出て、舞香の横に立った。まだほの暗さの残る窓の外には真っ白な世界が広がっていた。
「え、何?雪…すごいなあ」
舞香が窓を開けると、冷たい空気が流れ込んできた。
「ひえっ、寒~っ!」
「フフフ。目が覚めたでしょ」
肌を刺すような冷たさに、真言は背筋を伸ばした。
「ほら、急がなきゃ。今朝はオサが送ってくれるって」
窓を閉めながら舞香が言った。
真言は急いで朝食をとり、仕度を済ませると、長田の車に乗り込んだ。途中遼一を乗せて車は駅に向かった。見慣れた繭良村の風景はすっかり様変わりしていた。降り続く雪をリズミカルに散らす、ワイパーの音が静かに響いていた。