
其の2 決して開けてはならないカーテン
自動車を載せて大阪南港からフェリーで新門司港に渡るプランにした。パートナーも以前のように陸路をガンガン走る続けるほどのパワーはないし、半月ほど前に打撲した尾骶骨がまだ痛いとのこと。おまけに出発の三日ほど前に背中の筋肉を傷めたらしいので、フェリーにしておいて正解だった。渋滞もなく余裕で港に到着。
個室の部屋はビジネスホテルといった感じでなかなか快適。ルームキーに『ファーストB』と書かれていたので、おそらく個室はファーストクラスという位置づけで『A』の部屋はもう一つランクが上なのだろう。出航は19時50分。既にその一時間前には船上の人となっていた。明るいうちに海を見ながらお風呂に入るのも良いではないかと思い浴室へ。しかし浴槽の窓にはカーテンが引かれており『出航まではカーテンを開けないでください』と貼り紙。開けるなと言われると開けたくなるものである。窓の向こうが気になったのでチラリとカーテンの端をめくってみた。目の前にあったのは乗船用の通路のようで数人の人が歩いていた。それも結構な至近距離。この状態でカーテンを全開にすることは、一つ間違えれば犯罪になる。出航まであと数分だったので、ゆっくり髪を洗いながら出航を待った。動き出した船の浴槽の窓から見えたのは、明かりが灯る大阪南港の夜だった。