其の18 とどめの神社と〆の温泉
日向灘の『鵜戸神宮』から熊本県の西側に向かうには、宮崎自動車道が便利です。都城あたりから高速に乗る予定で、下道を走行していましたが、山の中を行く道は、車両数も少なくスイスイと走れるので、都城も通過して下道をどんどん行きました。帰路に着いたとはいうものの飛行機の出発は、午後8時台。まだ2時台なので時間に余裕があります。そこで今回の旅、三つ目の温泉に行くことにしました。白羽の矢が立ったのは、九州自動車道えびのインターの手前にある『白鳥温泉上湯』。えびね高原中腹にある絶景が自慢の温泉と、『るるぶ』の日帰り温泉カタログで紹介されており、その写真に惹かれて決定。
やがて行く手に山々が姿を現しました。目指すえびの高原でしょうか。スマホナビに導かれて山道を進んでいくと、右手に『白鳥神社』の看板。数百メートル先のようです。『鵜戸神宮』にて達成だったスタンプラリーに、とどめの一社が加わりました。高千穂で購入した宮崎の神社巡りガイドに掲載されていたので、神社の存在は知っていましたが、温泉ルート上でお待ちだったとは!ということで、脇道に入ると2分足らずで神社に到着しました。『白鳥神社』といえば、概ね御祭神はヤマトタケル尊。近畿地方には、ヤマトタケルが白鳥となって舞い降りたとう伝説が多く、三重県でも亀山市の『能褒野神社』や鈴鹿市の『加佐登神社』にある古墳が、その陵墓ではないかと伝えられています。ここにも同様の白鳥伝説があるそうで、遥か九州まで飛来されたようですね。境内は巨木に囲まれており、江戸時代に行われた奈良の東大寺の修復に、ここから伐り出された巨大な赤松が棟木として使用され、今も大仏殿を支えているそうです。樹齢500年といわれる神木の夫婦杉と、入り口のヤマトタケル像にご挨拶をして駐車場へ。はてさて、こちらではどんなスタンプがもらえたのでしょうか?ツーショットは写真師の撮影。ツアーの中で唯一可愛く撮れています(笑)
この神社の名前から『白鳥温泉』と名付けたのだろうなどと思っているうちに、温泉施設が現れました。しかしここは『白鳥温泉下湯』。私たちが目指すのは『上湯』なのです。どちらにするか迷ったのですが、露天風呂からえびの市街が一望できるという『上湯』を選択。少し上ると『白鳥温泉上湯』に到着。こじんまりとしたロッジのような建物です。入湯料はなんと今回のツアー最安値の310円。宮崎県の温泉の価格には驚きました。ガイドブックによると、ホテルや大きな施設は1,000円越えですが、400円、500円クラスの温泉が多いようです。ビバ!温泉パラダイス宮崎!初心者には『白鳥温泉 上湯の上手な極め方』という温泉利用説明書が渡されます。湯治場なのでしょうか、宿泊施設もあります。個室休憩所(11時〜3時)1名1,240円、大広間休憩1名660円と記載。温泉は格安ですが、のんびりくつろぐには、少々お値段が張るようです。脱衣所、内湯、展望露天風呂とシンプルな作りですが、硫黄や鉄分を含んだ黄土色のお湯が体に効きそうです。小雨がぱらつき始めましたが、露天風呂から望む壮大な風景が堪能できました。
お湯から上がって売店のあたりをウロウロ。お土産物を物色したりしていたのですが、なかなか写真師が出てきません。温泉上がりの暑さもクーラーで反対に冷やされていく〜という感じ。十数分して出てきた写真師によると、天然蒸気サウナの地獄蒸風呂も体験してきたとか。「蒸風呂は面倒そうやでやめとくわ」と入る前に言っていたのは誰だ。人のことは言えた義理ではありませんが、マイペースな御仁であります。ブツクサと文句を言いながら、待ち時間に買ったお土産をぶら下げて車に戻りました。この『白鳥温泉』は歴史が古く、西郷隆盛も湯治に訪れたといわれています。余談ではありますが、西郷さんつながりでお話を一つ。NHKの大河ドラマ『龍馬伝』放映の翌年2011年に、当時小学生だった息子と鹿児島二人旅をしました。その時に『霧島神社』や龍馬とお龍が新婚旅行で入ったという『塩浸温泉』などに行きました。今回の旅行で『るるぶ』を見て、「あ、ここ行ったことがある!霧島市、行ったわ」と、自分が初宮崎体験ではないことを知ったのでした(汗)ちなみにその時、噴火の影響で登山できなかった高千穂峰。頂上にある天之逆鉾は、今回も見ることができませんでした。いつか見てみたいものです。
駐車場を出て走り始めると、道に警備員さんが。この先5時まで工事で通れませんとのこと。えびのインターまで行きたい旨を伝えると、「この先は山の奥に続く道で、インターは反対方向ですよ」と教えていただきました。危うく道に迷うところ。工事中だったのが幸いでした。九州自動車道に乗って北へと向かいます。空港に着いてからゆっくり夕飯と思っていたのですが、空港内は震災の影響でまだお店は営業していないとのこと。ネットでチェックができるありがたさを感じる瞬間です。そこで途中のサービスエリアで夕飯。写真師は今回の旅で気に入った地鶏の炭火焼定食を頼んでいましたが、自分が何を食べたのか記憶がありません。空港に近づくにつれ、高速道路の路面が波打ってきました。地震の影響はこんなところにも。無事にニコニコレンタカーに到着。空港まで送っていただき、チェックイン。あとは飛行機に乗るだけです。午後7時を回って熊本の空も闇に染まり始めました。空からのメッセージがある気がしたので、外に出てみましたが、普通のグレーがかった空。でも何かきっとあるぞと思って、空港の横手の方まで歩いて行ってみました。すると建物の裏は美しい茜の空。これが今回の旅のご褒美のようです。往きのような雲海を見ることはできませんでしたが、『富士夢飛行機』に乗って小牧空港に到着。3日間の九州ツアーは終了しました。
3日間の旅が18日間という日をかけて完結いたしました。原稿総数33ページ(笑)短い旅の長いツアー記にお付き合いいただき、ありがとうございました。