其の⑤…ここで70年前にあったこと。
北マリアナ政府が定めた正式名称は現地チャモロ語のプンタンサバネタだが、世界ではバンザイクリフの名称で通っている。帽子などあっという間に飛ばされそうな強い風の中で海を見下ろしガイドのテレサさんの説明を聞く。
1994年の米軍の上陸で北方に逃れてきた日本兵や民間人の約一万人が80メートルの断崖を海をめがけて飛び込み、その時に『天皇陛下万歳』と叫んだためにバンザイクリフとよばれるようになったそうだ。
通説によると日本人たちは降伏をいやがり自決をしたとあるが、帰国後調べてみると米軍の惨殺から逃れるために海に飛び込むしかなかったという手記なども残されている。どんな歴史にも表があり裏があり、事実は70年という歳月の中に埋もれてしまっている。
石碑が並ぶ平和公園の美しさと過去の悲劇を結びつけるには想像力を必要とする。これまでサイパンなど南の島で多くの日本兵が亡くなったことは知っていたが、民間人の多くも命を落としていたことは今回の旅で知った。そんな知らなかったことをこれからいくつも知ることになる。波打ち付ける紺碧の海のその先には故郷日本があり…合掌。
こうして『サイパン1日観光&ショッピングツアー』という何とも軽いタイトルのバスツアーはしょっぱなからヘビーなストレートで始まったのだ。