
玻璃真人の里で、29日に年末恒例大餅つき大会をしました。
29日にはお餅つきをしないという所が多いのですが、「福をつく」と語呂遊びで餅つきを行っています。本の中にも餅つきのシーンが出てきます。
再び四臼目をつく真言の姿を真二はじっと見つめていたが、
「私もひとつつかせてもらおうか」
と、真言から杵を受け取った。
若い頃に田舎の親戚の家で手伝ったことがあるらしく、なかなかいい手つきだったが、十数回振り下ろすと
「だsめだな、もう身体がついていかんよ」と、笑いながら遼一に杵をバトンタッチした。
真二が真言に言った。
「マコトは覚えていないか。子供の頃、正月に家族旅行で行ったホテルで餅つきをやっていて、お前も餅をついたんだぞ」
「え、そんなことあったっけ」
「ああ、幼稚園か…、いや小学校に入ってからだったかなあ。どうしてもつきたいって、父さんと一緒に何回か杵を振ったんだ」
「へえ、そうなんだ」
真言は父の顔を見た。父の瞳は懐かしそうに遠くを見ていた。その横顔を見た時、真言の中に熱いものがこみ上げてきた。
「オイ、マコト。お前の番だぞ」
遼一の声がした。真言はその思いを押し込める様に、杵を振り下ろし続けた。